【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド】全てのゾンビ映画の原点にして頂点の解説と感想を述べてみた
現在に続くモダンゾンビを生みだした歴史的な名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は、ゾンビに囲まれた屋敷の中でジワジワと追い詰められていく恐怖が面白い作品です。
モダンゾンビってなんだよって人のために説明すると、それまでにあったブードゥーの呪いで蘇ったゾンビではなく、新しいゾンビの定義なのでモダンなんだそうです。噛まれるとその人もゾンビになるや、頭部の破壊や燃やすことでしか退治できないなど、今までのゾンビとは違った設定を与えられた存在になりました。
特殊メイクや白黒の映像が古臭く感じるからと、嫌厭するのは勿体ないです。ホラー映画ファンはぜひ見た方がいい至極の一作です。
公開後50年以上たって言うのものなんですが、記事の内容はネタバレ注意なので、大丈夫な人だけ読み進めて下さい。
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(字幕版)を視聴できるページ↓
概要
予告編動画
公開:1985年
監督:ジョージ・A・ロメロ
キャスト:デュアン・ジョーンズ、ジュディス・オーディア、カール・ハードマン、マリリン・イーストマン、キース・ウェイン、などなど
劇中ではゾンビたちを、グール(死霊)やリビングデッド(生ける屍)と言っています。ちゃんとゾンビという名称が定着するのは次作の『ゾンビ』からです。ただ、ややこしいので本記事ではまとめてゾンビとします。
あらすじ
父の墓参りにきた兄ジョニーと妹バーバラ、そこに突然ゾンビが襲い掛かってきました。もみ合いになると、あっけなく兄は死亡。バーバラは執拗に追ってくるゾンビを振り切り、何とか古びた屋敷に逃げ延びます。
屋敷の中では先に逃げこんでいた黒人男性のベンと、屋敷の地下室に隠れていた高圧的な中年男性のハリー・クーパーたちのグループと出会いました。
その屋敷を囲むように周りにゾンビが集まりだし、一同は追い詰められていきます……
ナイト・オブ・ザ・リビングデッドのネタバレ感想
ナイトオブザリビングデッドを鑑賞
— ジャズ対組織暴力 (@jazzroom66) September 18, 2021
バーバラは兄と墓参りにきたが謎の男に襲われる。
本作はゾンビ映画の先駆け的な映画で次作のゾンビに繋がる表現方法が随所にみられる歴史的作品。
久しぶりに鑑賞したが思ったより人間ぽい動きをするゾンビにはニヤケました。#クラシック映画月間
#jazzの映画 pic.twitter.com/Exle67Jd3K
1968年という半世紀以上前の映画ですが、ストーリー展開がテンポよく面白いです。
最初はただのいかれた狂人に攻撃されたのかと思いきや、だんだんと奴等の正体がゾンビだと分かっていく過程の見せ方が上手く、ラジオやテレビの放送、ゾンビその者を使って、あの手この手で少しずつ不死者が蘇りつつある世界を表現してきます。
集団殺人事件を起こしている暴徒達は何者なのか?劇中の人たちと同じく、視聴者にもゾンビの謎を推測させていく手法がいいです。
僕は最初、当時の時代背景を考えて、奇をてらったB級ホラー作品なのかと思い視聴したのですが、正統派のホラーな作りになっていたのはビックリでした。視聴した後はエンディングの淡々とした死体処理シーンとも相まって、呆然とした複雑な余韻を感じました。
正直、令和の今、白黒映画を万人に進められるかと言えば疑問な点はあります。ですが、ローマの休日やチャップリンが、歴史を超えた不朽の名作として面白いように、本作もホラー映画の歴史を語る上で外せない名作の一つで、多くの人が高評価するのも納得の内容です。
良かった点
- リーダー争いや人間同士の確執が描かれている
- 人種問題にへの風刺ある描写
- バ―バラの無能さが逆に愛おしい
- 身近な人間がゾンビに変ってしまう絶望感
- ラストシーンの後味の悪さ
悪かった点
- 今見ると古臭く感じる部分がある
- 給油シーンでの失敗はコントレベル
印象に残ったシーン
全編見所で、結構、イッパイあるんですが、その中でも特に好きな2つのシーンをあげると
冒頭の墓場でセメタリ―ゾンビに襲われるシーン
昨今のゾンビ映画ならば、顔が青かったり特殊メイクして一目でゾンビと分かります。しかし、白黒の映像では、ゾンビではなく、ただのいかれたオッサンに襲われたとしか思えないのが恐怖です。
さらに恐怖なのが、こちらのセメタリーゾンビを演じた俳優ビル・ハインツマンさんの年齢が当時32歳だという事実です。
キシリア・ザビ24歳、ドズルで28歳。ギレンとランバラルが35歳だから、そうやって考えると、まあ、外人ならそこまで老け顔でもないカモですが……
話題がそれましたがセメタリ―ゾンビは、始めてみたゾンビのインパクトとしては申し分なく、劇中では十分すぎる活躍をしてくれました。
ベンがハリーを撃ち殺すシーン
このシーンは今までの高圧的な態度や、ベンを見殺しにしようとする身勝手な振る舞いで、ハリーの自業自得としか言いず、擁護しようがないです。
撮影当時の時代背景を考えると、黒人が主人公と言うだけでも珍しいのに、さらにはその黒人をバカにする白人が撃ち殺される。これは強烈な社会風刺で、現代でも物議を醸しだしそうな衝撃シーンです。
ハリーを適当にゾンビに殺させても良いのに、あえてベンにハリーに撃ち殺させたロメロ監督は凄いですね。
ラストシーンの解説
夜が明けて館の中では、もう生き残っているのはベンだけでした。そこにゾンビを狩りながら自警団の人たちがやってきます。
窓から外の様子を覗いたベンは、自警団にゾンビと勘違いされて撃ち殺されます。その後、ベンの死体は、物のよう扱われます。かぎ爪でひっかけられ運ばれ、他の死体たちと同様に淡々と焼却処分にされていく…
あの悪夢の夜からせっかく生き残ったのに。なんとも後味の悪い終わり方です。
このラストシーン。一つは白人を殺した黒人のハリーを生き残らせておくと、社会的なヘイトが増すので殺されたと推測しています。これは当時のアメリカ社会に根強く残っていた人種問題を考えれば、致し方ない面もあるでしょう。
白人を殺すが、その後、その黒人は白人に殺される、ハリーだけでなくベンも因果応報な目に遭わすことで、ガス抜きがされ潜在的にヘイトの芽を摘んでおいたんですね。
もう一つは、死者よりも生きている人間の方が怖いというゾンビ映画のお約束的な意味合いです。自警団ですが、彼等は警察組織というより民兵に近い集団です。なので、人間ハンティングばりにゾンビを平気で撃ち殺しています。いくらアメリカが銃社会とはいえ、あまりにも容赦ないです。日本で考えたら山でクマが出たくらいの感覚でゾンビを射殺します。
この時は続編の構想はなかったはずなので、本作のゾンビ騒ぎはいったん収束に向かっている事をラストで示唆したのでしょう。
ただ、その後の続編では、世界はきっちり崩壊していくのですがね😀
シリーズ作品について
ナイト・オブ・ザ・リビングデッドは続編として
- ゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)
- 死霊のえじき(デイ・オブ・ザ・デッド)
この2作が作成され、ゾンビ3部作として親しまれています。
その後、だいぶん時間は開きますが、ロメロ監督は2005年から『ランド・オブ・ザ・デッド』『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『サバイバル・オブ・ザ・デッド』と、オブ・ザ・デッドシリーズ作品の映画を、また製作しました。
どの作品も世界観は共通していますが、作品ごとの直接的なつながりはないので、どの作品から視聴しても楽しめます。
リメイク作がありすぎ問題
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀
1990年にカラーでリメイクされたバーションで、話の大筋は同じだけど、バーバラがやる気マシマシです。原作の雰囲気をカラーで楽しみたい人には、オススメです。
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 最終版
こちらは公開30周年を記念して、原作に追加シーンを加えたバージョンです。映像は原作通り白黒です。
超立体映画ゾンビ3D
2006年公開のリメイク作、3Dメガネで見ると飛び出してみえるのが売りでした
この作品の前日譚を描いた『Night of the Living Dead 3D: Re-Animation』も2012年に公開されている。
Mimesis: Night of the Living Dead
2011年公開、ナイト・オブ・ザ・リビングデッドの世界に迷い込んだ人のお話です。
Night of the Living Dead: Resurrection
2012年にイギリスで作成されたリメイク作品で、物語の舞台が現在のイギリスになっている。
Night of the Living Dead: Darkest Dawn
2015年に作成されたリメイク作。本作はコンピューターゲームのような3Dアニメーションになっている。また物語の舞台も、田舎から都会に変りました。
派生作品
チルドレン・オブ・ザ・リビングデッド
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀』の続編のポジションにあたるが、評判は今一つ。
こんな人にオススメ
- ゾンビ映画の原点作品に興味がある
- ジワジワとゾンビに追い詰められるのが好き
- ロメロ監督のファン
ナイト・オブ・ザ・リビングデッドを視聴するには?
ナイト・オブ・ザ・リビングデッドはAmazonプライムビデオで配信されています。
Amazonプライムビデオの映画は会員でなくても、レンタルすれば視聴できます。面倒な会員登録なしで、すぐにサックっと見られるのがいいです。
またプライム会員ならば無料で視聴できます。プライム会員は無料期間の30日の間なら、いつ退会してもお金は発生しません。
本作以外の見放題の映画やアニメもあり、その他サービスも充実しているのでお得です。色々な映画を視聴したい人に向いているサービスです。
ナイト・オブ・ザ・リビングデッドはVHSからブルーレイまで、色々なバージョンがあります。種類が多すぎてどのバージョンを買えばいいのか分かりにくいです。
迷ったらヘタに古いのを買うよりも、HDリマスターしてて映像が見やすいブルーレイ版がいいです。
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