【死霊のえじき】は大人になってから見ると超面白かった【ネタバレ解説あり】
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』と続いた、ロメロ監督のゾンビ三部作の完結にして集大成。前2作とは違い本作はゾンビアポカリプスの後の世界を舞台に、生き残った人間たちの狂気を映画いています。
今までのゾンビ映画とは全く違う切り口でお話が進んでいきますが、ちゃんとゾンビ物として成立させているのは、さすがロメロ監督です。
1985年の公開以降、40年以上たったいまでも、愛され続ける本作の見所や、ラストシーンの考察をしていきます。
ネタバレ注意なので、大丈夫な人だけ読み進めて下さい。
死霊のえじきの動画を視聴できるページ↓
概要
予告編動画(グロ注意)
予告編だけでグロ耐性がない人は、限界突破して帰りそうな勢いがあります。
監督:ジョージ・A・ロメロ
公開:1985年
キャスト:ロリー・カーディル、アントン・ディレオ、リチャード・リバティー、ジョセフ・ピラトー、テリー・アレクサンダー、ジャーラス・コンロイ、ジョン・アンプラス、ゲイリー・ハワード・クラー、シャーマン・ハワードなど
キャッチコピー:今、死者は甦った… 人は獲物となり餌となる。
3部作ですが、シリーズごとのお話の繋がりはありません。
あらすじ
生者よりも死者であるゾンビの数のほうが多くなり崩壊した世界が舞台です。人口比率は生者1人に対して死者40万人で、もうどうにもならない状況です。
生き残った科学者のサラや、マッドサイエンティストのローガン博士、軍人たちなど12人のグループは、地下の軍事施設で研究を続けていました。ですが、有効な解決手段がないまま、日々だけが無為に経過し、生存者たちは消耗しています……
そんな中、クーパー少佐が死亡して、新任のローズ大佐がリーダーになると、軍人と科学者チームたちとの間の確執はマスマス広がり、一触即発の状態になっていきました…
死霊のえじきの感想
『死霊のえじき』(1985)
— 続・池袋らぶせくしー (@RUsrjkCwbF354K8) March 9, 2021
ロメロ自身が音声解説で「3部作の中で一番のお気に入り」と公言!気の合う仲間とのシェルターでの撮影が思い出深かったのか。サヴィーニが絶好調で、この分野では最高峰の地獄絵図が展開!やはりバブが一番人気らしく、ここから人はゾンビに可愛さを見出だすようになる(笑) pic.twitter.com/k0W8Sxahyy
物語中のほとんどは、地下施設の中で進んでいきます。そのため閉塞感が凄いです。冒頭で街に探索に行きましたが、いるのはゾンビばかりでした。
生きている人間はイカれた博士と、ゲスな軍人たち。そんな中で一人だけいる女性の主人公のサラ、癒しであるはずの恋人のミゲルはへっぽこですから、サラの心労たるや想像に難くないです。どんな気分でカレンダーにバツ印を書いてたんでしょうね。
低予算で制作されたらしく、人間同士のやりとシーンが多くゾンビの出番は後半まで少な目でした。ですが、後半のゾンビたちの基地突入からの展開が面白く、内臓ぶちまけまくりのゴア描写は凄かったです。特にゾンビが群がり人体を引きちぎるシーンは、今の映画にはないウェット感とグロさがあって見物です。
良かった点
- ゾンビの知性について新しい切り口で描いている
- グロいシーンは本当にグロイ
- ローガン博士の倫理観のなさ
- ゾンビよりも人間が怖い
- バブの敬礼シーンはゾンビ映画の歴史に残る名シーン
悪かった点
- ず~と地下施設にいるため中盤が単調に感じる
- ゾンビの出番がもっと欲しかった
印象に残ったキャラ
癖のある登場位人物が多かったです。その中でも特に印象に残ったのは
ローズ大尉
クーパー少佐の変りに、軍人側の新リーダーになった彼は超アホな暴君です。他人の揚げ足を取るだけで、建設的な意見や代案は言わない絵に描いたような嫌な奴です。そして有事の際には、部下をおいて自分だけ一目散に逃げだすクズです。
自分の上司がこいつだったらと思うと、心底ゾッとします。そうなったら、勤務時間中は、心を無にしてスネ夫の如く腰ぎんちゃくポジションで過ごしながら、トラバーユを考えます。
ローガン博士
ゾンビ研究が大好きなマッドサイエンティスト。一度でも死霊のえじきを視聴した人には、彼のヤバさは言わずもがなです。
彼の手にかかれば、クーパー少佐の死体もゾンビ研究の標本で脳みそ丸出しの刑で、死んだ兵士はゾンビのエサです。
倫理観の欠片もないのが素敵です。
バブ
#映画史に残るカッコ良い退場シーン
— Tristan (Grim Reaper) (@fa33tristan210) May 7, 2020
「死霊のえじき」の賢いゾンビのバブさんがフランケン博士の仇を討ち、最後に敬礼して去っていく場面。 pic.twitter.com/kIjl5yXy9n
ローガン博士がゾンビを餌付けして、知能を開発させたゾンビ。ゾンビ界のアイドルともいえる存在の「バブ」君。本作の真の主人公はバブと言っても過言ではないです。彼が少しずつ生前の記憶を思い出し、知能を付けていくのは見所です。
最後には軍人たちを追い回しローガン博士の仇をとろうとするバブ君、ここはもはや見ている気持ちは忠臣蔵で、バブを応援したくなります。
復讐を果たした後、敬礼をするとローズ大尉の肉を食わずに去っていくバブ。知能のあるゾンビは、この先どう生きていくのでしょうか?
ラストシーンの意味は
ヘリに乗り込もうとすると、ゾンビ軍団に襲われます。次に目覚めると、どこかの海岸に突然シーンが変ったために、打ち切り漫画のような印象を受けます。
もしかたら、全部、夢オチだったの?そう思わせる終わり方は、不完全燃焼でモヤっとするポイントです。
ですが、一緒に脱出したジョンとマグダーモットが海岸でのん気に釣りをしていることから、ちゃんと平和な南の島に脱出できたのでしょう。
カレンダーの意味
#オープニングでご飯何杯でもいける映画
— ボンクラ映画館 (@bonkura_theater) March 22, 2021
死霊のえじき pic.twitter.com/gReYUVim4h
そして、ラストシーンでは冒頭のシーンと同様に、カレンダーに×印をつけます。冒頭シーンを思い返すと、カレンダーは10月(October)で、日付には数字がなく、さらには全部の日付に×印がされていたました。
閉鎖された小部屋にいることや、×印をつけるためにカレンダーに手をやると、ゾンビに襲われています。そのことから、現状の閉塞感と、時間の概念がなくなるほど、この地下施設にいるのを表しているシーンですね。
ラストにサラが書いているカレンダーは11月(November)と月が替わり4日目に×印をつけます。地下施設から脱出したことにより、サラの中で何かが変わり、再び時間が進み始めたのでしょう。
デイ・オブ・ザ・デッドは直訳すると死者の日ですが、サラの中では地下施設にいた変わらない毎日は、日付が死んで未来への希望が無くなっていた状態でした。しかし、ラストでは日付が蘇っていることから、サラは生きる希望を取り戻した。だから日付が進み始めた。そういう意味もあったと考えられます。死者の日と死んだ日付けの二つの意味がタイトルに込められていたのでしょう。
シリーズ作品を知ろう
- ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
- ゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)
- 死霊のえじき(デイ・オブ・ザ・デッド)
この3つがロメロ監督のゾンビ3部作シリーズで、本作は3作目にあたります。前作の2作品もホラー史に残る名作と言われるだけあって、ゾンビ好きには面白い作品でした。
この後、ロメロ監督は2005年から『ランド・オブ・ザ・デッド』『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『サバイバル・オブ・ザ・デッド』と、またオブ・ザ・デッドシリーズ作品の映画を撮りました。
リメイク版もある
死霊のえじきは人気が高く
- デイ・オブ・ザ・デッド(2008年)
- 死霊のえじき:Bloodline(2018年)
過去に2度リメイクされました。
そして現在、アメリカのSyfyでテレビドラマとしてリメイク作品を撮影中です。2021年10月から放送予定です。
続編は?
直系の続編として、デイ・オブ・ザ・デッド2があるにはあるのですが、ロメロ監督もかかわっておらず、死霊のえじきからもリメイクのデイ・オブ・ザ・デッドからもストーリーも繋がっていません。
正統続編とありますが、どこが正統続編化は全く不明で、レビューが荒れるのも、致し方ないでしょう。
『新・死霊のえじき』は続編っぽい雰囲気のタイトルですが、こちらもゾンビ物というだけで、全く本作とは関係ないです。『ランボー』が流行ると『ランボー者』と似たタイトルを付けるのは、映画業界の悪癖ですね。
新・死霊のえじきの、日光でドロドロに溶けていくシーンは一見の価値ありなので、別物としてみるならアリですよ。
小説版があります
映画を元に小説家しています。映画内のカラー写真もあるから、小説とファンアイム両方で楽しめる内容です。
こんな人にオススメ
- 歩くゾンビが好き
- 閉鎖空間で極限状態の人間たちの渇望を見たい
- グロシーン大好き
死霊のえじきを視聴するには?
死霊のえじきはU-NEXTとAmazonプライムビデオで配信されていました。
U-NEXTは31日のお試し無料期間があり、その間ならその他の対象、映画、ドラマ、アニメなどが無料で視聴可能です。
ブルーレイからVHSまで、色々なバージョンがありすぎて分かりにくいです。迷ったらこのブルーレイリマスター版が良いです。坑道のシーンや暗いシーンでも、明るさ補正がされていて、今までのバージョンより映像がより見やすくなって分かりやすいです。
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